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何も準備してないけど!
前日で何とかなるなる・・・・
明後日フライトだなんて未だ信じられません・・・
以下はココマパロの続きです。
「・・・最近どうだい?」
ココは小松に尋ねてみた。
顔色はそこそこ回復しているようにも見える。
「うーん・・・正直に言えば、少しお腹が減っているような気がしなくもないんですが・・・」
自分の感覚を伝える。
「でも、先週と比べてお腹がより空いたって事は全然ないです」
「顔色もそこそこ、かな」
「ありがとうございます、ココさん!」
にぱっと小松は笑った。
小松の言う通りなのだろう、飢えた様子はない。
特に見た目病的なほど白いという事もない。
この数日ずっと様子を見続けているが、小松に特に変化は見られなかった。
起きて、窓から差し込む朝日を浴びている事もある。
何度か調理にもニンニクを使っているし、ココの十字架を怖がる事もない。
夜もココの目の前で大人しく寝ている。
夜中徘徊する事は勿論、最初に出会った時のように魘される事もない。
本当に変化したのかどうか疑ってしまいたくなるくらいだ。
吸血鬼なら野放しには出来ないが、人間ならずっと外に出ていない軟禁生活もそろそろ限界だろう。
逆にそれで精神的に弱ってしまうかもしれない。
外に出した方が良い事は明らかだった。
大丈夫だろう。
村人に会った途端目の色を変えて襲いかかる事はない筈だ。
小松の性格からしても、ココの目を欺くような真似はしていまい。
ココは教会の祭壇の前に小松を連れていった。
当然ながら小松に変化は見られない。
教会は・・・いや、神は小松を拒絶しないらしい。
ココは腹を決めた。
「いくつか約束してほしい事がある」
「はい」
神妙な顔で言うココに、小松はしっかりとココの目を見て頷いた。
「これから村長の家や宿屋に君を連れて挨拶に行こうと思う」
「本当ですかっ!?」
遂にココが言っていた助祭の話が実現するのだ。
そして何より、久しぶりの外出である。
これが嬉しくない筈がない。
「もし日光に長時間当たって気分が悪くなったり、体調に変化があればすぐ言う事」
病み上がりだから、と今は理由は何とでも付けられる。
「はいっ」
「既に何度か村長や宿屋のご主人とは話をしているから多分大丈夫だとは思うんだけど、基本的にはいつも僕の傍にいること」
「はい」
何時の間にやら既に大方の話は通しているらしい。
今までお世話になっていた宿屋のご主人に何と話せば良いのかを考えていたのは、もしかしたら無駄だったのかもしれない。
ココの用意周到さに感心しながら、小松はご主人に対する挨拶を考え始めた。
「宿屋へは基本的には夕方の仕込みの時間帯に行って、あまり遅くなる前に帰ってくる事」
「遅くなる前って・・・」
「本当は日が沈む前が望ましいけど、酒場の都合もあるだろうから、7時過ぎまでかな・・・?周りが真っ暗なら僕が迎えに行くよ」
最初にココに会った時に夜出歩かないと約束したからだろうか。
村の中で流石に襲われる心配はないだろうが、夜道の一人歩きが危険と思われたのかもしれない。
注意力が散漫な事は・・・まぁ、多少認めなくもないが、それにしたって随分と過保護だ。
それにその門限は大分厳しい・・・
村の人間が働くのは基本は日が暮れる前までだ。
だが酒場は違う。
一日働いた男たちを労う場所でもあるのだ。
仕事を終えて一杯、という男たちが多いが、一度家に帰って家族との団らんを経て酒場に来る男もいる。
いくら村の夜が早いとは言え、その時間だと店の片づけを手伝う事も出来ない。
しかし夜はモンスターの行動が活発化する時間帯でもあるので、出来るだけ目の届く範囲で監視しなければココも安心出来ないのだろう。
難しい顔で考え込む小松に、ココは譲歩案を出した。
「最初は必ず8時までには戻ってくる事。病み上がりだから無理はさせないって事で通す。けど、状況次第で大丈夫そうだと判断したら、時間を引き延ばしても良いよ」
「良かった!実はいつも酒場は10時頃まで開けているんです。ボクはもう少し早くに上がらせてもらってたんですけど」
ほっとした。
流石に酒場を7時に辞するのは心が引ける。
「もし人手が足りないような事があれば、ミサの時以外はいつ手伝いに行っても構わないけど、ちゃんと教えてね」
「勿論ですっ!」
「最後に晩御飯はきちんと食べる事」
「・・・え?」
今までは昼食後だけだったのに、一日に二回も心臓に悪い事をするのか!?とちょっと小松はドキリとした。
「あぁ、キスという意味ではないよ。そうではなくて、働く時間は基本食事時だろう?
もし勤務時間が長くなってまかないが出ても、お腹が空いてないなんて言って毎回食事を断るのはおかしいから、勧められたら素直に夕食を摂ってねって事だよ」
食事の事さえ気を付ければ、それ以外では気をつけなくても人間らしく・・・というより小松は以前の小松らしいままだろう。
「そういう意味ですか・・・・」
ほっとすると同時に嬉しくなる。
ココは既に夜遅くなる事を前提として話してくれている。
おそらく最初に早めに帰って来いというのも保険に過ぎないのだ。
きっと迎えに来ると言っているのも、最初だけの話だろう。
「分かりました!」
「誓えるね?」
祭壇の前での約束は神に誓うのと同じ事。
「はい!」
けれど小松にとってこの約束は何の苦もない。
むしろこんなに早く出歩かせて貰えるとは思ってなかったくらいだ。
「じゃあ行こう」
そう言うとココは小松を伴って教会を出た。
村長の処へ行くと、村長を始め皆が小松の回復を喜んでくれた。
既に話を通してあったと言う通り、いや、逆に村長の方から小松がココの助祭となるように勧められた。
出来れば一時前の司祭の世話をしていたのと同様、一緒に住み込んで雑事も対応して欲しい、との言葉を貰う。
どうやら村長にとってそれほど教会の・・・というよりココの事は頭を悩ます出来ごとらしい。
つまりそれは僕に女性の矢面に立てって言ってるのかな・・・?と小松は少し背筋がヒヤリとした。
「大丈夫だよ、小松くん。勿論お手伝いはして欲しいけど・・・無理な事はさせるつもりはないから安心して」
不安そうな顔をする小松に、察しの良いココが告げる。
「はぁ・・・」
信用していない訳じゃないが、こと女性問題に関しては本当かなぁ・・・?とやはり少し心配になる小松だった。
「ご迷惑をおかけしました!」
そう言って深く頭を下げた小松に宿屋の主人はうむ、と低く頷き、夫人は涙ぐみながら良かったわねぇ、と微笑んだ。
「あ、あの、それで・・・・その、ボク・・・」
オロオロと言葉を探す小松に、ココは助け舟を出す。
「ご主人、小松くんを僕の助祭とすることをお許し頂けますか?」
「ココさんっ?!」
ココが深く頭を下げたので、小松の方が慌ててしまった。
自分の都合で宿屋ではなく教会で世話になることになったのだ。
ココに迷惑を掛けこそすれ、ココに頭を下げてもらう理由などない。
「顔を上げてくださいココさんっ!ボクがお世話になってる身なんですからっ!」
慌ててココの肩を揺さ振るが、ココは頭を上げない。
主人はそんな様子を見ながら僅かに片目を見開いた。
「すみません、勝手なことを言ってるって分かってるつもりなんですけど…仕事は出来る限り手伝います!その、今は体調の事もあって早く戻らないといけないんですけど、ミサの時でなければココさんも融通を聞かせてくれるそうですしっ…!」
必死になって言い募る。
「ふん。納得済みか…お前の人生だ。お前の好きにしろ」
主人は一言そう告げた。
「ありがとうございます!」
ココも漸く顔を上げてくれる。
そっと顔を見合わせて微笑んだ。
変貌した小松は今までと同じようには生きていけない。
事情を知りつついざという時に対処出来るココと共にいるのが一番なのだが、そのなかでもココは小松が出来るだけ以前と変わらないような生活を送れるようにと心を砕いてくれる。
料理が好きな小松に料理をする機会を沢山与えてくれる。
小松を助祭に、などと一芝居をうつ為とは言え頭まで下げてくれた。
宿屋の主人達は今まで養ってくれた恩人だが、流石に本当の事は言えない。
おそらくそれが今取れる最良の形なのだろう。
「助祭が大変だったらいつでも戻ってらっしゃいね」
お茶を入れながら夫人が茶目っ気たっぷりに言った。
「大丈夫です!でも、ありがとうございます」
両親を亡くした小松にも帰る場所はあるのだと言外に告げられ、自分は果報者だなぁと心から思う。
「あらまぁ、こんな事を言うと何だか小松ちゃんをお嫁に出すみたいね」
『ぶほっ!』
その一言に三人して飲み物を吹き出した。
* * *
べ、別に本誌が羨ましいだなんて思ってないんだからねっ!