[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ココ誕生日おめでとー!
そんなSSのような、そうでないような(やっぱりか!)
甘くないです。
しかも続きます・・・・(汗)
明後日、暴風雨かぁ・・・(遠い目)
今日は10月29日。
別に特にどうという事はない、日。
ただ、毎年僕はこの日は仕事をしないで家に籠る。
まだグルメフォーチュンに来て間もない頃。
顔も名前も売れて無かった僕は、占い師をしていく上の登録が必要だとして、特に問題がない部分での情報開示に応じた。
占いの方法や精度などは企業秘密扱いされるが、何を占うのか、また占いにかかる時間、料金・・・そう言った事はある一定の範囲で情報開示を求められる。
一般人に、どの占い師に占って貰うのが良いか、分かりやすくする為だ。
グルメフォーチュンを歩くガイドブック等にも恋占いにはこの店が良い、などとお勧めの情報もよく載っている。
しかし中にはぼったくりの占い師もいて、簡単で精度の低い占いで法外な報酬を要求するものも居るのだそうだ。
そんな怪しい輩にグルメフォーチュンの評判を下げさせないようにする為だと言われれば応じるしかない。
僕の占いは僕にしか出来ないものだから、特に占いの方法を開示しても問題はなかったのだけれども、一応必要最小限、聞かれている事だけに簡単に答えておいた。
この時の僕の失敗は、その情報開示の時に己の名前だけでなく、生年月日も書いてしまった事だ。
今まで生きていて自分の容姿で得をした事など一度もなかったのだけれど、それは占いの町に住んでからも変わる事はない。
情報が漏れたのも、僕が女性に追いかけ回されるようになったのも、比較的早い時期だった。
人と接するのが苦手な僕は、人に取り囲まれるのが好きじゃない。
自分の身動きが出来ないような状況は言わずもがな、だ。
追いかけ回されるのは常としても、その様子が今まで追いかけられていた人と違い過ぎて、僕は戸惑いばかりだった。
害しようとはつゆほども思っていない。
けれど女性客は”客”という枠を簡単に踏み越えて僕の領域にズカズカと立ち入ってくる。
丁重にお断りしてもお断りしてもお断りしても、全く懲りてはくれない。
僕を追ってきた研究者と違って話は通じる筈・・・と思っていたのも、直ぐに諦める事となった。
言葉を発してはいても、聞くつもりのない言葉は全く耳に入らないようだ。
僕の言葉の上げ足を取り、都合の良いように解釈して、僕の迷惑を顧みない。
何も知らないとは言え、隙あらば僕に触れようとする命知らずな彼女達。
一般人のフリをしている僕の心臓には非常に悪い。
かといって殴り飛ばす訳にもいかないから、引いてもらうのには益々気を使う。
今までも人が嫌いだったが、別の意味でも苦手になりそうだった。
だが、意外とそんな命知らずな女性たちも、一対一ならそう積極的に近寄ってくる事がない。
店の中でテーブルを挟んでいれば僕にとっては安全圏なのだ。
何故店の中と外でそんな風に態度が変わるのかは不思議でならないが、それが女性の謎というものなのだろうか?
僕には良く分からないが、集団の心理も働いているのだろう。
誕生日、クリスマス、バレンタイン・・・
何かとかこつけては女性客は僕にプレゼントを手渡してくる。
何もお返しは出来ないから、と断ると逆に”優しい”と悲鳴が湧いた。
それ以降、手渡されるプレゼントは更に多くなってしまった。
それでも曲がりなりにも客だから、と平和的に慎重に言葉を選んでいるつもりでも、予想と違った反応が戻ってくると手の打ちようがない。
どんな台詞が災いとなるか分からないものだ。
別に物を貰うのが嫌という訳ではない。
例えば占いで良い結果を出した客が礼に、と菓子折りを送ってくる場合もある。
そんな物であれば僕も構わないとは思う。
けれど下心満載のプレゼントは、一つ受け取るととんでもない事になる。
一年目にそれを経験してしまった僕は、いわゆるイベント時には店は一切開けなくなった。
どうせ、本当に悩んでいる人達が占いに来るのは、そういうイベントの前であって、当日ではない。
僕が目当ての人には残念だが諦めて貰おう。
迷惑に思いこそすれ、誕生日等のイベントをありがたいと思った日はない。
けれど、今日のように数少ない友人が遊びに来ているのは、僕だって嬉しいと思う。
それがたまたま、29日というだけで。
ただたまたま近かったからハントの帰りに寄ってくれたというだけの事だけど、二人に他意などなくても、僕はその何でもない日常が嬉しい。
・・・いや、小松くんに思いがけずに会えた事が嬉しい、かも。
小松くんは他の女性客と違って話はちゃんと通じるし、一対一でも物おじする事がない。
僕を”特別”な人ではなく、一人の人間として見てくれる素晴らしい人だ。
トリコやサニーとは違う、一般人としての扱いがどこかくすぐったい。
「?笑ってるんですか、ココさん?」
きょとん、と首を傾げながら小松くんが尋ねる。
どうやら自然と頬が緩んでいたらしい。
「おい、小松。ココはムッツリだからきっとスゲー事考えてんぞ」
「トリコっ!!」
小松くんに言われて慌てて引き締めようとした顔が、トリコの一言で引き攣る。
「ココさん・・・一体どんな想像もつかない事を・・・!!」
口元を手で覆って一歩後ろに下がる小松くんの目が笑っていて、本気じゃないとは分かったけど、訂正せずにはいられない。
「違うからっ!ただ一歩も外に出ないって決めていた日に小松くんが来てくれて嬉しいなぁって」
「へ?」
「おい、ココ。俺は?」
ちょっと拗ねた口調でトリコが尋ねる。
「どうでもいい」
「酷っ!」
「冗談だ」
小松くんの前で変な事を言うからだ。
「えーっと。一歩も外に出ないって、もしかしてボク達お邪魔でしたか?」
僕の言い方が悪かったらしい。
逆に気を使わせてしまったようだ。
「違うよ。今日は僕の誕生日だから、グルメフォーチュンの人に会いたくなかっただけ」
「おー。そうだったか」
「・・・・たんじょう、び・・・えええええええーーーーーー!?」
「小松くん・・・驚きすぎ」
びっくりするかもしれないとは思ったけど、そんなに大声を出さなくても。
「だってだってだって!今日ってココさんの誕生日なんですか!?」
「うん、そうだよ。街に行くと大変だから、毎年その日は家の中で一日中過ごすんだ」
「普段ですらあんだけ取り囲まれてるからな」
トリコが補足してくれる。
元々人に取り囲まれるのは苦手なんだ。
それが今日中に会わなきゃ、声をかけなきゃ、プレゼントを渡さなきゃ、と普段以上に積極的な女性に追いかけ回されるのは、ご免被りたい。
「はぁ、なるほど・・・えーっと、あまり言われるのは嬉しくないのかもしれないですけど、改めてココさん、誕生日おめでとうございます」
「ありがとう。小松くんに言って貰えるなら嬉しいよ。」
また気を使わせちゃったようだけど、言ってくれるのが押しつけがましくない小松くんなら歓迎だ。
「ボク、知らなくて何の準備もしてないんで、もし良ければこれからお祝いしませんか!?何か作りますよ、ボク!」
「これから?遅くなっちゃうよ?」
しかもハント帰りで疲れているだろう。
体力温存して明日の仕事に備えた方が良いだろうに、小松くんは笑顔で応える。
「大丈夫です!勿論、買いだしは僕とトリコさんで行ってきますから、ココさんはお家でゆっくりしてて下さい!」
「え、俺も?」
自分には関係ないとばかりにのんびり茶を啜っていたトリコが声を上げた。
「トリコさんが一人前で満足してくれるなら、ボク一人で買い出しに行きますけど?」
ジト目で小松がトリコを見やる。
どうせお祝いで作ってくれた小松くんの料理の殆どはトリコの胃袋行きだ。
「や、俺も行く。むしろ何か狩ってくるか?」
食べる、という行為の為には労力を惜しまないのがトリコだ。
あっさりと意見を翻した。
何と言うか、憎めない。
「ならそっちは僕が行くよ。街の食材だけじゃ、トリコの腹を満足はさせれないだろうしね」
引きこもる予定も、楽しみが出来れば出かける気になってくる。
「でも、ココさんのお祝いなのに・・・」
「今からじゃ、分担した方が早いよ。僕がハント、トリコが買い出し、小松くんはその間キッチンをお願いして良いかな?家にある物は好きに使ってくれて構わないよ」
何時もならトリコと僕の役割分担は逆だが、今日ばかりは特別だ。
小松くんは遠慮しようとしたけど、僕の言葉にその方が効率が良いと判断したらしい。
「じゃあ、お二人ともよろしくお願いします!」
『了解!』