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いや、仕事の休み自体はちゃんと毎週あるんですが、用事もない丸一日引きこもれるお休みは久しぶりなんです!!
引きこもって何するの?とか時間の無駄じゃないの?とか言われても気にしない!
引きこもりぐーたら大好き!
今日は一歩も外に出ないぞ!と晩御飯の誘いも断る始末。
・・・いや、だってもう出ないって決めたもん。
決めた後に言われても、また今度ーって・・・・断るのは普通じゃないんでしょうかねぇ?
ま、そんな訳で久しぶりにゆっくりパソコンに向かえた気がします。
今年最初のパロ更新。
「東の森へ行く」
トリコは明言した。
小松にとっては行き慣れた山菜等を取る食材豊富な場所であったが、今は吸血鬼に襲われた場所でもある。
「・・・来るか?」
「はいっ!是非!」
思わせ振りに尋ねたトリコに、小松はなんの躊躇いも見せずに答えた。
「お前な…」
もう少し良く考えてから答えた方が良いんじゃないのか、と呟くが、それを聞いたココはゆっくりと首を振った。
既に諦めの表情だ。
懲りない性格は天性のもののようだ。
立ち入り禁止の区域だが、ハンターと共に行くなら危険はないだろう。
それどころか元々立ち入る事にあまり危機感がなかった小松なのだ。
「ココさんも一緒に行きましょうよ!ね?」
更にはココの手を掴んでぐいぐい引っ張ると言う荒技に出る。
トリコは首を竦めた。
「…しょうがないね」
「えっ」
毒舌の一つや二つ飛んでくるものと思っていたのに、予想外な了承。
さっきトリコを一刀両断したココは一体どこへ行ったのか。
「やったぁ!ココさん、グルメケースを持っていって良いですか!?いっぱい採って帰ってきましょうねっ!」
久しぶりに森に行ける!と無邪気にはしゃぐ小松を茫然と眺めるトリコだった。
東の森は食材が豊富で教会からも近い。
三人でいても人目につかないので村人に余計な詮索をされずに都合が良い。
ついでに強力な正体不明の結界をトリコにも確認しておいてもらおうと思っていたが、予想外のところで新たな発見をする事になった。
グルメケースを持参し、明らかにはしゃいだ様子だった小松が村の出口に近づくに連れカタカタと震えだしたのだ。
「小松くん?」
「どうした?」
急に立ち止まってしまった小松を二人が振り返る。
「…あ…いえ、何でも…」
そう答える小松の顔色は悪い。
とても”なんでもない”ように見えない。
「寒いのか?」
「体調が悪いのかい?」
さっきまではそんな様子はなかったのだが…
「大丈夫、です」
小松は何とかそう答えたが、震える身体は変わらない。
やはり実際森へ行くとなると吸血鬼に襲われた記憶が蘇り、今更になって怖くなったのかもしれない。
「じゃあとっとと行くぞ」
行きたくなければそれまでのこと。
こんな所でタラタラしてたら日が暮れてしまう、とやや強引にトリコは小松の背を押した。
びくんっ
押されてつんのめるように数歩歩きだすが、強ばった身体が震えだし、腰は引けて自分からは足を進められない。
あそこに近寄りたくない。
訳の分からない恐怖。
「あまり無理をさせるな、トリコ」
ひょい、とココは小松を抱き上げた。
一睨みすると、トリコは不満そうに鼻を鳴らす。
一方でココに抱き上げられた小松は随分とおとなしくしていた。
「…えっ?あれ…?」
ココに抱かれた途端、小松の震えは止まった。
いや、震えだけじゃない。
気分の悪さや訳のわからない恐怖心等が綺麗さっぱり消えていた。
その事に抱き上げたココも気づいたらしい。
「怖いなら戻るかい?」
尋ねれば未だ頭にクエスチョンマークを浮かべたような顔ながらも、小松は首を横に振った。
「怖くありません」
さっきも小松は別に吸血鬼を怖いと思った訳ではなかった。
だったら何故、と言われるとそれは分からないとしか言いようがないのだが。
「森にはまだお前を襲った吸血鬼が居るかも知れないぜ?」
少し脅すような声音で尋ねた質問にも、小松は至極あっけらかんとした表情で答えた。
「でもトリコさんもココさんも居るじゃないですか。それに今は朝ですよ?」
吸血鬼など出る筈がない、と自分を棚に上げた何とも暢気な台詞。
先ほどまでの小松と違い過ぎる。
「成程。倍ソンに対する指向性はない、か・・・」
村の出口を見てトリコが呟いた。
小松との態度をみて照らし合わせれば、村に施された結界は”魔物”全体に効力を及ぼすものか、”吸血鬼”に対する指向性のものかのどちらかだ。
しかし魔物全てにこれほど強烈な拒絶を示せる結界など、優秀な結界師が一生涯をかけても出来るかどうか。
国王の城。
何人もの超一流の結界師が命を賭してかけた魔物避けの結界が存在するのはそこだけだ。
そこはありとあらゆる人外を拒絶する。
しかしこのような村にそんな結界が存在する理由はない。
”吸血鬼”に指向性を持たせるにしても、これほど強い結界は滅多と見ないものではあるが。
その結界が小松を拒絶した。
本来は外から中へ迎え入れない為のものだが、最初にココが変貌前の小松を抱えて村に入ってきている。
小松単体は拒絶したが、人間・・・あるいは神父であるココかは分からないが、抱かれて一体化することで、結界が小松を異物と認識出来なくなったのだろう。
トリコは村境に辿りつき、施された結界を眺める。
ごくシンプルな作りで、特に凝った意匠は見受けられない。
普通に見ればごく一般的な村にある、一般的な”魔物避け”だろう。
だがその効力は絶大。
効果の強い結界は、それなりに大掛かりな術式が必要になってくる筈。
それをこのようなシンプルな形でやってのけている。
その時点で並大抵の結界師ではない。
「けどな~んか知ったような匂いがする気がするんだがなぁ・・・」
トリコに結界師の知り合いはいない。
気のせいかとも思いながらトリコは森へと進んだ。
一方ココもトリコを追いかけるように森へ入る。
「あ、あの・・・ココさん。ボク、自分で歩けますよ・・・?」
分かっていない小松は、最初こそ茫然としていたものの、ココに抱えられながら歩いていると認識すると流石に気恥ずかしくなったらしい。
しかし村を出た瞬間、結界の近い場所で降ろしてしまえば、さっき以上に小松は震えだすだろう。
「そうかい?さっきは随分震えていたからまだ心配だな」
歩きながらココは告げた。
「いえ、何だか分からないですけど、もう大丈夫ですから」
むしろ真正面からだっこされているので、ココの顔が近くて困るのだが。
「じゃあ次からはちゃんとやせ我慢なんてしない事。良いかい?」
「・・・・してもココさんには分かっちゃうのに・・・」
言う前に色々察してくれるココなのだ。
やせ我慢していたとバレたところでもう驚きもしない。
「駄目だよ、小松くん。ちゃんと約束して。じゃないといつまでもこのままだよ?」
「うっ!」
それは困る。
ココはサクサク淀みなく歩いているが、真正面からこんな大きなお荷物を抱えたまま歩くなんて邪魔以外何物でもない。
視界も悪くなるし体力ももたないだろう。
ココも支えてくれているが、小松の方も自ら手足をココの肩や胴に回してしがみつくような格好なのだ。
つい先ほど自分の年齢を知られた手前、どうにもその格好は気恥ずかしい。
ココは全く気にしていないのか、その後の小松に対する扱いが今までと全く変わらないのであるが。
「小松くん」
じっと見つめられると益々居たたまれなくなってしまって困る。
「わ、分かりましたっ!約束しますからっ!!」
逃げ道もなく、小松は頬を赤らめながら叫んだ。
「ん、良い子」
「わっ!」
ちゅっ
軽いリップ音を立ててキスをすると、ココは小松を降ろした。
ブーッ
トリコが噴いたのには知らんぷり。
ココはもう一度、少し深めのキスを送ると、漸く小松を解放した。
既に村からは大分距離を開けている。
小松も結界からの影響は受けないだろう。
「お前らな・・・」
呆れ顔でトリコが振り向く。
いちゃついてんじゃねーよ、という前に小松が叫んだ。
「ボク、もう子供じゃないんですよっ!!!」
捨て台詞のように言い残すと、耳まで真っ赤にして小松は一人駆けて行った。
そんな小松の後ろ姿を、ココは口元に笑みすら浮かべて眺めている。
いや、問題はそこじゃないだろう・・・
ガクリとトリコは項垂れた。