…おかしい。
流石に2日も経つとココも不安になってきた。
2日前はそんなに嫌な予感はなかったのに…
2日前の夜だった。
最近は昼ではなく夜に小松の食事を行うようになっている。
キスだけならともかく、流石に精液を昼間に飲ませるのは抵抗があったからだ。
腰が抜けてもそのまま寝られるというのも利点だ。
そして一時的であっても小松はココの元に帰らざるを得ない・・・とは、ココの都合ではあるが。
なので、いつものようにココは小松を膝に乗せ、たっぷりと唾液を注ぎ込むように舌を絡ませていた。
「ほら、小松君…また…」
相変わらず小松の目はとろんとしており、注意して見ていないとすぐ唇の端から唾液を溢す。
ココは伝った滴を下から上へと拭い、濡れた指を小松の目の前へと持っていった。
小松は差し出されたココの大きな手を両手で包み込むと、濡れた指先をパクリとくわえた。
「小松君、流石に僕の指は君の栄養源にはならないよ」
放っておくと何時までも指を啜ろうとする小松を宥める。
ちゅぽんっと指を抜けば、名残惜しそうに舌がチロチロと先端を舐めた。
ココは苦笑しながら告げた。
「小松君が欲しいのはこっち、だろう?」
小松に舐められた濡れた指先で、己の唇をなぞる。
ふらふらと誘われるがまま身を乗り出すと、小松は躊躇もなくココの唇に己のものを重ねた。
「今日は随分積極的だったね。何かあったの?」
たっぷり一時間、それでも足りないと10分、20分と引き伸ばされてしまった事にからかい混じりに言えば、小松はほんのりと頬を染めた。
嫌がられてないのが救いだ。
「すみません…明日は村長さんのところにお客さんが来るそうなんです。
美食に煩い舌の肥えた方だそうで、光栄な事にボクに手伝いに来るようにと言われたんですが…」
そこまで言って小松は言い淀んだ。
小松の気持ちは痛いほど分かった。
「小松君の料理はおいしいものね」
ココは小松の腕はこの村一と思っている。
いや、都会に出たってそうそう小松程の腕前の料理人には会えないかもしれない。
小松自身、腕を見込まれたのは本当に嬉しいのだ。
しかしそれと同時に不安もある。
あまりに忙しかったり村長に誘われて泊まる羽目になったら、ココの元に戻れなくなってしまう。
ココに会えない事は、小松にとって飢えに直結する。
今のうちに少しでも補給を。
そう言うことなのだろう。
血液より効率の悪い栄養源は毎日取らないといけないのが難点だ。
傍に居ればそれも可能だが、以前も同じような事があっただけに、明日帰って来れない可能性は高い。
美食に五月蠅いとなると、料理に対する細やかな配慮も必要となってくるだろう。
何時も以上に体力や精神力を使う。
けれど一日くらいなら何とかなる方法もある。
「そうだな…不安なら、コッチもいる?」
そう言うとココは己の下半身を指差した。
「えっ…でも…今はそんなに空腹という訳ではないですし…」
戸惑って言い淀むが、チラチラと視線がココの下半身に向いているのがあからさまで、ココは笑いを噛み殺すのに神経を使った。
きっと小松は気付いてない。
「どうせ明日戻ってこれないなら、今日するか明後日するかの違いしかないだろう?」
そちらで補給すれば、一日くらいは問題ないだろう。
今現在飢えている状態ではないので、言いだし辛かったのかもしれない。
「そ…そう、でしょうか…?」
おどおどと小松がココを見る。
「そうだよ」
さらりと軽く答える事で、出来るだけ小松の躊躇を取りのぞく。
不安を抱えたまま力を出し切れず半端な仕事をさせるよりは良い。
料理は小松にとって仕事でもあるが、それ以前に楽しみでもあり、今となっては生き甲斐でもある。
本来はあまりさせたくない最終手段ではあるが、小松にとって何が一番幸せかを考えれば、何もしないではいられない。
帰れなかった事を考えれば、今取れる対策は全て取っておきたいのだ。
どうせ、あれ以降も回数は少ないが唾液だけでなく何度か精液を分け与えてはいるのだから・・・今更この一回を躊躇する必要もない。
それでもうんうんと唸っていた小松は、やがて決意したようにココを見上げた。
「あの、ココさんさえ宜しければ…お願いします」
そう言って律儀に頭を下げた。
いらぬ世話ではあるが、協力してもらっている負い目の為か、小松はどうにかしてココを喜ばせようとする。
最初こそいらないと断りはしたが、結局飢えている時の補給はココの指示を待たずに小松がしゃぶり付いてくるから、今では断るのも諦めてしまった。
今も小松は椅子に座ったココの足の間に潜り込み、ペニスの先端を咥えている。
大抵の場合ココは意識をそちらに向けないよう、聖書を読んだりミサの説法について考えていたりする事が多い。
今日もココは空いた手で書き物をしている。
じゅっ…じゅるっ…
品のない音がするのと半身の濡れた感触が居心地悪い。
何とはなしに眉をしかめて下を見れば、己のものをくわえて上目遣いで見上げる小松としっかりと目が合ってしまった。
ココはこれが苦手だ。
小松は当然話せない。
何と声をかければ良いのかも分からず、曖昧な笑みを浮かべると、ぎこちない動きで股間に顔を埋める小松の頭を撫でた。
促したつもりはないが、小松はチロチロと舌で先端を刺激しだした。
ゆっくりと出し入れされる小松の口元を見ていられず、デスクに視線を移す。
本来なら、子供がそんな風に気を使う必要などない、と言うべきところだ。
しかし実際問題、全く気持ち良くなければ与える事も出来ない訳で…
与えるのは構わない。
ただ、その間どうしていれば良いのか分からない。
最初のうちは調べものや書き物をしてはいるが、あまりに集中し過ぎるといつまでも終わらず小松の負担になるし、不意に立ち上がって何度か小松をえづかせた事もある。
けれど幼い子供に何をさせているのか、とどこか背徳感が湧きあがってくるのも事実で。
いやいや、相手は人間じゃない、と頭で考えつつ、やはりどこか彼を人間扱いしているのもココ自身気づいていた。
ふう。
ココはため息をつく。
ビクリと小松の肩が震え、更に余計な気を使わせるかもしれない、とココは再び出そうになったため息を噛み殺した。
あまり意識を逸らし過ぎるのも小松に負担をかける…あまり早いのも男同士とは言え、いや、男同士だからこその見栄や矜持もあるのだが。
どうせ今更書き物になど集中出来ない、とココは小松に意識を向けた。
「小松君…そろそろいくよ…?」
声をかければ、小松はこぼさないようにとより深くココを銜え込み、根元を両手で支えた。
どぷっ…
「んっ!…んくっ…」
断続的に出るそれを、喉を鳴らして零さないように飲み込む。
いつも限界まで我慢してのそれは、視界がぼやけたように焦点も合わず一心不乱に飲み込むのだが、
今回はあまり飢えた状態ではないからか、羞恥に頬を染めながら飲み干していた。
食事中に理性を手放さない小松は珍しい。
ココのものから口を離しても、目を向けることすら出来ないでいるようだ。
「あの…ありがとうございまし、た…」
それでも礼はきっちり言えるのは好ましい。
そんな良い子に性的なからかいを口には出来ない。
「どういたしまして?」
だからと言って、ああいった事をした後のセリフとしてこれはどうだろう?とも思いつつ…
このところ、いつもこうだ。
常にせんないことを考え続けている。
以前なら、小松の食事を提供した、とただそれだけの事だったのに…
ふぅ…
ココのため息は止まらない。
秀麗な顔で悩ましくため息をついたココは、出しっぱなしのそれを早くしまってくださいと言うべきか、
自分がそっとしまうべきか小松が傍で真剣に悩んでいる事にも気付かなかった。